成れ果て村の三賢のひとりであるベラフ。
頭がよく真面目で優しく、頼りになる人物です。端正な顔立ち、美しい目をしていて女性ファンにも人気のキャラですね。
反対にワズキャンは社交的で頼りにはなるけど、どこか底知れない恐ろしさを感じさせるところがあります。こういう人って女性受けはそんなに良くないのではないかと思いますよね。
(すいませんワズキャンさま!・・・一応謝っておかねば、後がコワイ(´;ω;`)ウゥゥ)
それはさておき、今回はベラフのヒトだった頃と『成れ果て』になってからについて。また、ミーティとナナチとの関係についても解説します。
三賢ベラフ:ガンジャ隊の頃
ヒトだった頃のベラフは本当にカッコよかったですよね。
リーダー格のひとりとしてガンジャ隊を率い未知なる黄金郷を求め航海をしていました。
ベラフは非常に知識が豊富で特に言語能力に長けています。
アビスの先住民族と出会った時も未知の言語を理解し、コミュニケーションをとりながらアビスに関する情報を収集していました。
奈落の住人(干渉器)とすぐに言語によるコミュニケーションが取ることができたのもベラフがいたからこそです。
仲間に対しても非常に紳士的です。
自信のなさげなヴエコに優しい言葉をかけているシーンが描かれました。
ちょっといい雰囲気になりかけましたね。
ベラフの罪
しかしベラフもまた、ガンジャ隊を全滅に追い込んだ水もどきによって追い込まれていました。
そしてワズキャンがみんなを救うために振る舞ったものを食べてしまいました。
その食べ物がイルミューイの子供だと察していたのですが、あらがうことができず口にしてしまったことに酷く後悔していました。
「飢えにあらがうことができなかった」
これがベラフの背負った罪でした。
罪を償うようにガンジャ隊の誰よりも先にイルミューイに身を捧げることを望みました。
ベラフはイルミューイに取り込まれ『成れ果て』になりました。
その姿は美しい目をした巨大な蛇のような姿でした。
『成れ果て』の姿は多かれ少なかれ、その者の「欲」の形になるということでしたね。
ベラフの特徴をヴエコに語った言葉からみてみましょう。
「美しさとは眼だ!いいか?即物的な眼ではない。『眼差し』と捉えよ。その眼差しこそが美しさの本質だ」
そうですね。『眼差しの美しさ』こそベラフを表す最大の特徴です。
そしてその『目』すらも「欲」にはあらがうことができなかった。
ベラフの「欲」は「飢えからの解放」ではないでしょうか。
成れ果てとなったベラフとミーティの関係から解き明かすことができます。
ベラフとミーティ
成れ果て村で暮らすこととなったベラフは何度か黎明卿ボンドルドと会ったことがあります。
その何回目かの来訪のときに連れてきていたのがミーティです。
ベラフはすぐにミーティが不死であることを察しました。
その時にベラフの「欲」がでました。
ボンドルドにミーティを譲ってくれと頼んだみたいです。しかし結果はNO。
しかし欲を抑えられないベラフは村の精算システムを使ってミーティの複製を作ってもらったのです。
対価として742本の手足、体長の5割、感覚器官の一部を支払うことになり、それらすべてを失う代わりにミーティ(複製ですが魂も映しとっている)を手に入れました。
大事な眼までも差し出しました。
ミーティを手に入れて何をするのかと言えばミーティの体液を吸い続けるということです。
この『あらがうことのできない食欲』がベラフの形を表しているもののひとつではないでしょうか。
ベラフは他の成れ果てたちよりかなり身体が大きいですからね。
ベラフとナナチ
ナナチがミーティを見つけたのはマジカジャさんに案内されてベラフの家に来た時です。
ナナチはベラフにミーティの体液を吸い続けることをやめてもらうよう頼みました。
その対価としてナナチは自分自身をベラフに支払いました。
これによってベラフはナナチとミーティと一緒にいることができるという価値を手に入れたのです。
しかし特にナナチの体液を吸うということはしません。
ナナチは不死ではありませんからね。
ミーティは村が創り出したものなので、村の中でしか生きていけません。
だからベラフの家にい続けることになります。
そこへナナチを迎えにリコがやってきました。
ナナチを返してもらうにはリコの身体の一部を交換する必要があります。
リコはベラフに何を差し出したのでしょうか?
三賢ベラフ:リコの差し出したもの
ベラフはリコに条件を告げます。
成れ果て村の最高の価値はヒトの子供です。
リコに出した対価の条件は髪の毛と左手の爪5つ、それに加えて両目、両足、臓腑の半分。
この3つから選んで欲しいということです。
リコは考えました。
リコのアイデンティティは『冒険』です。
冒険を続けられなくなることがリコの死です。
頭の中で思考を巡らせます。
両目を奪われた状態で冒険は続けられるのか。あるいは両足はどうか。
臓腑の半分が奪われたら冒険できるのか。
リコの中で答えは出ました。
そしてベラフに告げようとしたその時、マジカジャさんに口をおさえられ、止められました。
途方にくれるリコ。
その時、原生生物が村の中に侵入してきたため、リコは一旦ベラフの家から離れます。
リコはナナチを取り戻すために何を選択したのでしょうか。
答えは描かれていませんが、リコの思考をみてみると『臓腑の半分』ではないかと推察します。
『内臓・・・あ、でも胃袋を取っちゃった探窟家が数年生きたって話も・・・』
という考えが巡っていましたからね。
三賢ベラフの最期
ファプタが村を破壊するため、侵入してきました。
村が破壊されるとベラフをはじめ成れ果てたちは生きていけません。
村が創り出したミーティも同じです。
ファプタが母なる村に帰ってきたことを確認したベラフは目覚めの時を確信しました。
ファプタが帰還した瞬間、村であるイルミューイが反応し、ベラフが捧げたすべての記憶が戻ってきました。かつての誇り高いベラフに戻ったのです。
それはもうナナチを手放しているということです。
ナナチに「行くがよい」と伝えました。
ベラフは匂いで記憶を「体感」ごと伝えることができます。
ベラフはやるべきことを確信しました。
ファプタに伝えたいものがあったのです。
それはイルミューイが奪わなかった唯一の記憶。
イルミューイとヴエコを見つめた記憶でした。
ベラフが美しい眼差しで見続けたイルミューイとヴエコの日々の記憶でした。
もし成れ果て村がなくなる時がきたら、ファプタに伝えて欲しいことをベラフに託していたのかもしれません。
イルミューイの大事な宝物、ヴエコとの想い出を。
三賢ベラフ:まとめ
最後に気高く美しい眼差しを持ったベラフに戻ってよかったですよね。
ベラフの罪滅ぼしはファプタにヴエコの想い出を伝えることだったのですね。
ベラフがファプタと対峙したシーンはいつ読んでもグッとくるものがあります。
ベラフはずっとファプタを待っていたのでしょう。
ファプタに匂いを届けた瞬間、やっとベラフは救われたのではないでしょうか。