たつき諒「7月5日の大災害予言」は何も起きなかった──しかし観光業に広がった“予言の二次被害”

2025年7月5日、日本列島には不思議な緊張感が漂っていました。

理由は、漫画家・たつき諒氏の予言にまつわる情報がSNSや一部メディアで再注目されたことにあります。

彼の著書『私が見た未来 完全版』に描かれた「2025年7月5日に大災害が起きる」という内容が、静かに、しかし着実に人々の間に不安を広げていったのです。

結果として、この日には大災害は起こらず、特筆すべき地震や噴火、津波といった現象は確認されませんでした。むしろ、何事も起こらなかったことに多くの人が胸をなで下ろしたことでしょう。

しかし、「何も起きなかったからよかった」とは言い切れない影響が、じわじわと現れてきています。

特に観光業界では、この“予言”がもたらした影響が数字や実例として現れ始めており、それは一種の“二次被害”とも呼べる状況です。


不安が広げた「キャンセルの連鎖」

静岡県の富士山周辺や伊豆半島、神奈川県の箱根や湘南、さらには山梨の富士五湖エリアなど、いわゆる“富士山に近い観光地”では、6月末から7月初旬にかけて宿泊予約のキャンセルが相次ぎました。

ある中規模旅館の担当者は次のように語ります。

「例年なら7月は夏休み前の駆け込み需要がある時期ですが、今年は6月中旬からキャンセルが増え始め、7月5日前後の予約は半数近くが取り消されました。『念のためやめておきます』『家族に止められました』という声が多かったですね」

こうしたキャンセルは、風評が根拠となっているため明確な補償対象にはなりにくく、経済的な損失だけが地域に残ることになります。

被災はしていないのに“失われた売上”という形で予言の影響を受けてしまったのです。


外国人観光客にも波紋──訪日プランを変更する動き

今回の予言は日本国内のみならず、英語圏や中国語圏のYouTubeや掲示板、スピリチュアル系フォーラムなどでも注目されました。

「富士山が噴火する」「東京に大地震が起こるかもしれない」といった極端な解釈が海外で拡散されたことで、一部の訪日旅行者が旅程の見直しを余儀なくされました。

旅行会社関係者によれば、「東京~箱根~京都」というゴールデンルートのうち、関東を避けて関西や北海道に変更する問い合わせが複数寄せられたとのことです。また、台湾や韓国の旅行者の中には、日程を8月以降に変更するケースも見られました。

このように、日本の地震や火山に敏感な海外旅行者にとって、「予言」も不安材料の一つとして実際の行動に影響を及ぼしたのです。


地元住民や観光従事者の複雑な心境

「予言が外れて本当によかった」という安堵と、「でも、そのせいで売上は大幅減」という落胆。その間で揺れ動いたのが、観光地で働く人々の心境です。

とある富士山麓の道の駅職員はこう語ります。

「一部のSNSでは“7月5日に富士山が噴火する”と信じ切っていた人たちが『今すぐ山を離れろ』といった投稿をしていて、それを見て怖がった観光客が何人もキャンセルしたという話を聞きました。冷静に考えればあり得ないことでも、ネットの拡散力はすさまじい」

彼らが直面したのは、いわば「災害が起きなかった災害」です。

現実には何も起きていないのに、予言という非科学的情報が引き金となって経済的な損失が生まれ、人々の生活に影を落とす。その構造があらわになった出来事でもありました。

ナオキマンショーの炎上──予言を拡散したYouTuberへの批判

この“予言騒動”の中で、特に注目を集めたのがスピリチュアル系YouTuber「ナオキマンショー」に対する批判です。

彼はたつき諒氏の予言を何度か取り上げ、7月5日の大災害の可能性に言及していました。

一部視聴者は、ナオキマンショーの過去動画を「不安を煽るだけで根拠がない」と批判し、X(旧Twitter)では「#ナオキマンショー」「#予言外れた」がトレンド入り。

炎上のきっかけとなったのは、彼が7月5日直前に投稿した「やはり富士山が怪しい」といった趣旨の動画が、7月6日になっても削除されず残っていたことでした。

視聴者の中には、「責任を取るべきではないか」「不安で旅行をキャンセルした」という声も見られ、スピリチュアル系インフルエンサーの発信のあり方が改めて問われる形となりました。

ナオキマンショー本人は炎上後に「私は未来が見えるわけではなく、あくまで参考情報として取り上げている」と弁明しましたが、すでに数万人単位の視聴者がその内容を信じて行動を変えていたという事実は、情報発信者の影響力の大きさを物語っています。


メディアとSNSの情報拡散のあり方

今回のような“予言騒動”が現代において注目を集める背景には、SNSの拡散力と、センセーショナルな情報への人々の関心の高さがあると言えるでしょう。

特にYouTubeやX(旧Twitter)では、「○月○日に災害が来る」「この夢は的中率が高い」といった煽り文句で、動画や投稿がバズる傾向にあります。

中には広告収入目当てに不安を煽る内容を意図的に制作するケースもあり、結果として真偽の曖昧な情報が大量に流通する事態を招いています。

その一方で、公的機関や学術的な専門家からの冷静な情報発信はあまり拡散されず、不安の声ばかりが目立つという構造的な課題もあります。

たつき諒さん本人のスタンス:「私は未来を予知する人間ではない」

たつき諒さんは、かつて自身の漫画『私が見た未来 完全版』のあとがきやインタビューで、次のような趣旨の発言をしています。

「私は予言者ではありません。ただ、夢に見たことをありのまま描いてきただけです。それが当たったこともあれば、そうでないこともあります」

つまり、彼女自身は「予知能力」を主張しているわけではなく、「夢を見た内容」を作品として表現しているだけ、という立場を明確にしています。

2021年の再ブーム時にも一貫してこの姿勢を崩していません。

また、『完全版』では「2025年7月5日に災害が起こる可能性がある」といった記述があるものの、断定的な口調ではなく、「注意すべき日」「印象が強く残った日付」として記されており、決して断言や警告をしているわけではありません。


「予言の自己増殖」への懸念

加えて、彼女の発言の一部には、「自分の夢が一人歩きしてしまうことへの戸惑い」もにじんでいます。

「描いたものが人の不安を煽るように使われたり、センセーショナルな言い方をされるのは本意ではない」(過去インタビューより)

つまり、たつき諒さん自身は“夢”を共有してきたにすぎず、その解釈や拡散が独り歩きし、予言のように扱われてしまうことに慎重でありたいという意識を持っていたと見られます。


今回の件で「沈黙を貫いている」理由

2025年7月5日を過ぎた現在、たつき諒さんから直接的な声明が出ていない理由としては、次のようなことが考えられます。

  • 予言が外れた/当たったという話に対し、元々関与する意図がない
  • センセーショナルに報じられることを避け、静かに距離を置きたい
  • 予言者として扱われることへの強い違和感
  • 精神的・身体的な事情で表に出ることを控えている可能性

そもそもたつき諒さんは、2000年代初頭に一度「漫画家を引退」し、静かに暮らしていた時期もあり、メディア露出を積極的に行うタイプではありません。


今後に向けて:地域観光への信頼回復と“情報免疫”の重要性

大きな災害が起きなかったことは幸いでしたが、その陰で生じた“予言の副作用”は、観光業界にとって深刻な教訓を残しました。

今後は、以下のような対策が求められるかもしれません。

  • 地方自治体や観光協会による「デマ対策チーム」の設置
  • SNSや口コミに過敏にならないための“情報リテラシー教育”
  • 必要以上のキャンセルを防ぐための柔軟な予約・返金ポリシーの整備
  • 正確な防災情報を、日常的に発信し続ける体制づくり

観光は「安心」と「期待」を買う行動でもあります。だからこそ、信頼を築くことが極めて重要です。

今後、災害の有無にかかわらず、何らかの不安が拡散したときに、地域がどう対応できるかが問われる時代になっているのです。

今回の2025年7月5日の予言をめぐる騒動は、たつき諒さん自身の意図とはかけ離れた形で拡大しました。

本人が「夢の記録」として表現したものが、スピリチュアル界隈やYouTube、SNSなどによって“災害の予言”として広まり、ついには観光業や経済活動にも影響を及ぼしました。

一方で、何も起きなかったという事実と、彼女の「予言者ではない」というスタンスは一致しており、結果的にたつき諒さん自身に過度な責任を問うことは的外れと言えるでしょう。


まとめ:「何も起きなかった」は終わりではない

2025年7月5日、たつき諒氏が描いた予知夢のような“大災害”は起こりませんでした。

しかし、それによって誘発された“起きなかったことによる被害”は、観光業界を中心に現実の問題として残っています。

未来を予知することはできなくても、過去から学ぶことはできます。

今回の一件を通じて、情報をどのように扱い、どう行動するかを考えることが、現代の私たちに求められているのかもしれません。

にゃん
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